鍼研究論文のまとめ記事

朝霧高原治療院の田中です。今日も梅雨らしい天気でしたね。

今日も昨日に引き続き鍼研究の日でした。週に2日のこの時間を設けていることは我々の鍼灸に取り組む姿勢そのものだと考えていて、うちの治療院にとってかけがえのないものです。

これまで数多くの鍼の論文を読んできて、鍼にはすぐれた鎮痛効果があり、複数の疾患に対しては試すべきであることは明確ですが、鍼には炎症の予防による神経疾患の抑制効果が期待できると考えていて、それを山梨大学での鍼研究で明らかにしたいと考えています。

そのためには、あるいはそうでなかったとしても日々鍼の研究論文を読むことが必要です。

自分で読んでも治療院で患者さんや秋山鍼灸師と内容について話すだけで、普段はあんまりこういう記事でネットに上げたりはしていないのですが、「アウトプット大全」を読んで「ちょっと内容を載せてみようかな〜」と思ったので今日読んだ記事の訳を下に載せました。興味のある方は読んでみてください。私も読んでない元論文にはできるだけ目を通していこうと思います。

これです↓
鍼灸の神経基質:末梢神経から中枢神経までのメカニズム

鍼は身体の特定部位への鍼を介した経皮的な機械的、熱的あるいは電気的刺激を含む治療介入である。鍼はチャイナとその他アジアの国々で数千年の間利用されてきた。アメリカなどの西側諸国での主に慢性の痛みや神経疾患といった症状に対する鍼の利用はゆっくりとしかし着実に増加している(Ma et al., 2016; Nahin et al., 2016)。

鍼が痛みを減少させたり、その他の臨床的に意味のある結果をどのようにもたらすのかについてのメカニズム研究は行われている最中である。この特別記事は末梢および中枢神経系でのメカニズムに着目して鍼の神経的基盤について検証している。

歴史的に西側での鍼研究は主に1970年代に始まった。鍼鎮痛を説明する初期の人気のある理論は「ゲートコントロール理論」で、鍼からの刺激は中枢神経系での侵害受容性求心路のシナプス前阻害を生じさせると説明するものだった(Melzack and Wall, 1965)。しかしゲートコントロール理論はミリ秒のオーダーでの鎮痛を予測しうるのに対して、鍼鎮痛は最初の刺激後30分かけてゆっくりと鎮痛効果が最大になる (Pomeranz, 1989)。このような結果は人気のあったゲートコントロール理論を否定することとなった。

しかし1970年代のその他の研究は疼痛緩和に対する鍼のメカニズムにおける末梢および中枢神経系のシグナル伝達に明らかに関連していた。オピオイド受容体の拮抗薬であるナロキソンが選択的オピオイド受容体に結合することにより鍼鎮痛をブロックすることが示されたのである (Mayer et al., 1977)。

実際、鍼鎮痛は求心性感覚神経によって仲介されており、局所麻酔薬であるプロカインが鍼鎮痛を無効にしてしまうのに対し(Ulett et al., 1998)、血管閉塞は鍼鎮痛になんの効果も生じさせないことが示された (Chiang et al., 1973)。

これらの初期の研究は、鍼鎮痛における内因性オピオイド受容体のメカニズム的な役割をさらにはっきりさせたり(Harris et al., 2009)、アデノシン受容体の調節(Goldman et al., 2010)、免疫調節に対するドーパミンシグナル伝達(Torres-Rosas et al., 2014),、脳の第1次体性感覚野での神経可塑性(Maeda et al., 2017)を示唆するなど、より最近のヒトおよび臨床前基礎研究によって強化されている。

また慢性疼痛に対する鍼の臨床研究では鍼の鎮痛効果が治療終了後数ヶ月持続することから、痛みプロセスの長期にわたる可塑性の変化が示唆されている (MacPherson et al., 2017)。このタイプの長期にわたる感覚プロセスの変化は中枢神経生理学的に保証されている。

これらの過去50年にわたる鍼研究はこの治療の臨床効果への明らかな基盤となる中枢神経系に光を当てている。この記事は鍼のメカニズムの神経的基盤に基づいた研究を促す。

これらの研究にはヒトでの行動学的研究および神経画像研究、動物モデルでの分子、細胞、生理学的な基礎研究が含まれる。この記事に含まれる臨床応用は痛み以外にも慢性のかゆみ、うつ、脳卒中、薬物中毒、心血管調節などをカバーする。

鍼鎮痛や抗うつ効果 (Wan et al.; Zheng et al.) だけでなく炎症の調節(Ma et al.) に対する分子および細胞標的、鍼刺激に対する特異的な身体部位の特徴 (Fan et al.) が特定されている。

その他の臨床前研究は鍼による心血管調節に対する視床下部室傍核(Cheng et al.) 、薬物依存における楔状束核(Chang et al.)といった特異的な脳部位に光を当てている。

ヒトでの研究では鍼によって生じる脳の反応や鎮痛(Hui et al., 2009; Napadow et al., 2012)、より広範な鍼の臨床反応(Zhang et al.) において脳のデフォルトモードネットワークの役割が原因であることがすでに示されている。

この件についてヒトでの脳画像研究は運動結果に対する脳を基盤とする鍼の潜在的なメカニズム(Nierhaus et al.) やかゆみ (Min et al.)に対しても評価を行っている。

ヒトでの行動学的研究はtemporal summation (時間的な総和による増強)に対する鍼調節や鎮痛に対する役割 (Baeumler et al.) について評価している。

鍼に関連した認知作用や期待の役割、プラセボ効果に対しても研究されている (Aichner et al.; Lee et al.; Musial; Song et al.)。

その他の研究は心的イメージと鍼との組み合わせ (Takahashi et al.) あるいは 経頭蓋磁気刺激と鍼との組み合わせ (Huang et al.) による神経調節やストレス軽減に対する鍼のより一般的な効果(Lee et al.)について評価を行っている。

最後に、鎮痛への役割について鍼の構造的パラメータが評価され(Bae et al.) 、ある興味深い研究は結合組織と神経系が鍼の効果に対してどのようにして別々に関与するのか? (Chang et al.)について研究を行っている。

我々は読者が鍼灸の作用メカニズムをサポートする実質的な研究基盤を拡大するとともに、鍼灸の臨床効果を支える経路や神経回路をより正確に定義するための今後の基礎研究や橋渡し研究へとつながるよう、この新しい鍼灸研究の概論を楽しんでくれることを期待する。
↑ 鍼研究会(SAR)の時の写真ですがもう8年前になります。とっても楽しかった。これからはこういう学会もオンラインになっていくのかと思うと少し残念な感じがします。

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