花粉症に対する鍼と指圧

こんばんは。今日は鍼研究の日でしたが、思いの外早く終わってしまいました。

で、面白い研究論文を見つけたのでご紹介します。

これです↓

https://cmjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13020-021-00536-w


ドイツのシャリテー大学からの報告ですが、このグループはかつて鍼が季節性のアレルギー性鼻炎(≒花粉症)に有効だという論文を出してます。


ヨーロッパでは3割の人たちが花粉症に苦しめられているそうですが、ドイツではなんと17%の人は鍼を経験したことがあるそうです。これは自分の周りの人6人に鍼をしたことあるか尋ねたら一人くらいは「したことあるよ」という返事がある、ということでドイツ人って鍼にあんまり抵抗ないんだな、と思いました。


さて。鍼が花粉症に効く、ということが分かったとはいえ鍼は時間もおカネもかかります。そこで男女比ほぼ半々、平均年齢38.5才の41人の2年以上花粉症を患っている患者さんに参加してもらい、花粉症の薬以外に5つのツボに花粉症の季節に4週間自分で毎日最低20分の自己指圧をしてもらったら鼻炎に関連したQOL、症状、頓服薬の量は薬だけの場合と比べて4週後と8週後にどう変化するか?を調べたそうです。

おもしろそうですね。


4週後、薬だけのグループ21人に比べて指圧と薬のグループ20人ではこれらの結果が全て改善したそうで、8週後では差が減った、という結果になったそうです。そして大部分の患者さんたち(88%)はとても満足していたようです。


使われた5つのツボは合谷、曲池、迎香、風池、印堂でドイツ医療鍼灸委員会によって決定されました。このツボの選定についての記載が結構面白くて、合谷は気を動かして血流を改善するが、このツボへの指圧は呼吸機能が改善することが示されているそうです(Maa SH, Wang CH, Hsu KH, Lin HC, Yee B, Macdonald K, et al. Acupressure improves the weaning indices of tidal volumes and rapid shallow breathing index in stable coma patients receiving mechanical ventilation: randomized controlled trial. Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:723128.)。


そして曲池は熱を冷まし、痒みを抑え、その免疫調整および抗炎症作用について知られているそうです(Lian Y, Chen C, Hammes M, Kolster B. Bildatlas der Akupunktur - Darstellung der Akupunkturpunkte. Berlin: KVM - Der Medizinverlag Dr. Kolster Verlags-GmbH; 2013. p. 352.)。こういう風に「なぜこのツボを使ったのか?」について言及されている論文は少ないです。

17%もの人が鍼をやったことがある、ということの他に、花粉症の患者さんの中には薬だけでよくならない人もいて20%の人は薬を飲んでも結構重度である、ということ。


花粉症に対して鍼が有効なのでアメリカ耳鼻咽喉科アカデミーが作った新しい臨床ガイドラインには鍼がオプショナルトリートメントとして推奨されている、というのは初めて知りました(Seidman MD, Gurgel RK, Lin SY, Schwartz SR, Baroody FM, Bonner JR, et al. Clinical practice guideline: allergic rhinitis. Otolaryngol Head Neck Surg. 2015;152(1 Suppl):S1-43.)。


指圧が通年性アレルギー性鼻炎(耳指圧)、がん治療による悪心嘔吐、原発性月経困難症、がん関連疲労、陣痛誘発に有効である、という報告も聞いたことがありませんでした。


総勢160人の鼻炎あるいは喘息患者が参加した4つのランダム化試験の結果をまとめたシステマチックレビューでは指圧がエフェドリン点鼻薬よりも有効だったと報告しているそうです。

鍼の効果は1/3が鍼特有の効果、2/3は皮膚の接触や心理的効果など特異的でない効果、みたいな記載のある論文も少なく、とても参考になりました。


ツボや経絡の部分には神経終末が多く集まっている、という記載も面白かった(Li AH, Zhang JM, Xie YK. Human acupuncture points mapped in rats are associated with excitable muscle/skin-nerve complexes with enriched nerve endings. Brain Res. 2004;1012(1–2):154–9.)です。


1回読んだだけですが、引用論文も含めてもう少し細かく読み込んだら日常の鍼に役立つ情報がたくさんありそうな論文でした。


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