月経前症候群(PMS)に鍼が効く?

鍼灸師の田中です。今日は昼寝日和なので治療院前の庭にタープが欲しい気分です。気持ちよさそう。

さて。

月経前症候群に鍼はどうか?という問い合わせがありました。これについてはこれまでに複数の研究結果が報告されていて、試す価値はあるのではないか?と思っています。少し端折りましたがコクランレビューに月経前症候群に対する鍼と指圧の効果に関する報告がありました。

「根拠に基づいた医療」を行うには臨床研究を多く行ってそれらの結果について検討したり、分析する必要があります。

エビデンスの質の高い臨床研究にするには普通「二重盲検クロスオーバー比較試験」という方法を使うのですが、「鍼をしている(受けている)」のと「鍼をしていない(受けていない)」ことを「鍼灸師にも患者にも分からなくする(二重盲検)」ことはできないので、鍼の研究のエビデンスの質は往々にして「低い」あるいは「とても低い」という評価になってしまいます。

それで「鍼には効くという根拠がない」ということになるのですがまあもっともなことです。しかし経験として効果を実感する患者さんが多いため健康保険制度が日本とは異なる欧米では鍼の利用者は増えてきています。

以下要約です。

月経前症候群に対する鍼と指圧
Armour M, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2018.

鍼はチャイナで月経前症候群を含む婦人科疾患の治療に伝統的に利用されてきたがその有効性については不明である。

このレビューでは使用上の全体的な改善と有害事象を主要評価項目として包含基準を満たした総勢277名が参加した5つの月経前症候群もしくは月経前不快気分症候群(PMDD)に対する指圧と鍼の文献を元に安全性と有効性について検討した。

副次的評価項目には特異的な月経前症候群の症状、反応率、QOLを含めた。SSRIなどによる治療と鍼あるいは指圧とを比較した研究はなかった。治療回数は7〜28回だった。

サンプルサイズの少なさや発見バイアスや報告バイアスに関連したバイアスリスクのためエビデンスの質は低いが、鍼は偽鍼と比較して気分関連のPMSの症状、身体的なPMSの症状を大幅に減少させることがDaily Record of Severity of Problems scale (DRSP)を評価項目とした研究で示されている。有害事象に差があるかを決定づけるのに十分なエビデンスはない。グループ間で反応率に差はなさそうである。

固定効果モデルを使うと偽鍼に対する鍼の反応率の高さを示すことができるが、高い不均質性のため我々はランダム効果モデルを使ったので鍼の明らかな有効性を示すことはできなかった。鍼は偽鍼と比較してQOLを改善させる可能性がある。エビデンスの質が低いため治療しない場合と比較して鍼がPMSに有効であるかは不明である。

同様にエビデンスの質は低いが偽指圧と比較して指圧が中程度から重度のPMS症状の女性の数を減らす可能性もある。今後の研究においては有効なPMS症状の測定方法を用いたり、適切に盲検化したりすることが課題となる。

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