突発性難聴に対する鍼のシステマチックレビューとメタアナリシス
朝霧高原治療院の田中です。新年初めての投稿になります。今年もよろしくお願いします。
先日「難聴に鍼を試してみたいという人がいる。病院ではもうやれることはないと言われてしまって。」という問い合わせがありました。難聴に対する鍼については以前ある患者さんとしばらくトライしたことがあって、その時にはいい結果は得られなかったので正直なところ、鍼でいい結果が出るかどうか分からない、といったところです。
でも、もし自分の耳が突然聞こえなくなって、病院で「もう何にもできることないから」って言われてしまったら、鍼かなんかで何とかならないものなのか?って思うのは分かる。
だから患者さんが来る前にひと通り調べてみることにしました。要点を説明してそれでも鍼したいかどうか患者さんに聞いてみようと。
まずは聞こえる仕組みから。外耳道から鼓膜に伝わり、中耳でツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨と伝わり、卵円窓から内耳に入って外リンパ(前庭階→鼓室階)に伝わり、正円窓で振動が消失。その時に振動が基底膜を介して内リンパ(うずまき細管)に伝わり、聴細胞が振動を神経信号に変換させて脳に送る。感音難聴では内耳か神経に問題がある。
突発性難聴はストレス、過労、睡眠不足、糖尿病などにより血流障害やウイルス感染、自律神経障害が起こり、聴細胞が障害されることによって起こるらしい。抗ウイルス薬、血管拡張剤やビタミンB12、ATP製剤、ステロイド、高圧酸素療法なんかで治療が行われ、発症後1週以内に治療された場合、治癒率40%、50%では何らかの改善が起こるらしい。ステロイドの鼓室内投与は鼓膜穿孔などの副作用が生じうるため賛否両論。遅くなればなるほど難治。30dB以上の音が聞こえない。耳鳴り、めまいを併発しやすい。QOLが障害される。
鍼する場合、よくならない可能性があるが鍼による他のメリット(痛みやこわばりの改善、健康増進など)は得られるはずだから、というところを理解してもらった上でチャレンジしないとツライ。
チャイナの安徽(あんき)医科大学から20研究1423症例を検討したシステマチックレビューとメタアナリシスによると、従来療法に鍼を組み合わせると従来療法単独よりも聴力を改善する効果が高いらしい。「研究の質は悪いが薬を飲んでダメなら鍼を試すべし」みたいな感じ。鍼は末梢血流を促進、血液の粘性を改善、局所的な虚血と無酸素状態を緩和、予防するので突発性難聴に使うことにはもっともらしさはありそうだ…とのこと。
全身性の疾患に目のまわりのツボを使うやり方があるらしく、鍼をした群vs従来療法での有効率(純音聴力検査、PTAで15dB以上に改善、蚊の音、秒針の音外耳道20dB)は81%vs62.5%だったらしい。それは治って欲しいとは思うけど、これ本当か?
この文献、いろんな理由で全体的に信頼性が乏しいような印象を受けました。他のも探して読んでみようかと思います。
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