鍼の作用メカニズム


先日カフェインを摂取すると鍼の鎮痛作用が抑制されるという報告を紹介しましたが、その大元となる研究を続けてきたのがユニバーシティーカレッジロンドンのジェフリー・バーンストック先生です。バーンストツク先生が書いた記事があったので読んでみました。

解剖や作用メカニズムが分かって指圧や鍼するのとそうでないのとでは、治療効果に少なからず差があるでしょうし、やる側としても楽しさが違います。

それにしてもバーンストック先生は眉毛が特徴的です。

朝霧高原治療院
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鍼灸におけるプリン作動性シグナル伝達(拙訳)
ジェフリー・バーンストツク
http://www.askdrdawn.com/resources/ATP-Signaling-Acupuncture_Burnstock_2014.pdf

鍼の生理学的な基盤におけるプリン作動性シグナル伝達の役割は2009年に初めて提唱された。
鍼治療の最中にケラチノサイトやその他の皮膚細胞からATPが放出されることを示すデータがこの仮説に説得力を与えている。
皮膚の知覚神経のP2X3受容体を活性化させるATPは自律神経機能をコントロールし、痛覚活性を調節する脳幹の運動神経にメッセージを伝える。
ここで鍼灸効果の基盤となるプリン作動性シグナル伝達の最近のエビデンスを記述、再考し、この仮説のさらなるテストへの道のりを提唱する。

序説

細胞生化学でアデノシン3リン酸(ATP)が細胞内のエネルギー源であることはよく認知されてきた。
1970年にバーンストックらはATPが腸管において非アドレナリン性かつ非コリン作動性神経伝達物質として作用することを示し(1)、1972年にはATPの細胞外作用を(ATPはプリンヌクレオチドであるため)「プリン作動性シグナル伝達」と名づけ、プリン作動性シグナル伝達仮説を形成した(2)。
2009年にバーンストツクはプリン作動性シグナル伝達は鍼灸効果を仲介する生理学的メカニズムに関係しうることに言及した。
この仮説は鍼、熱、電流などによる機械的な皮膚の変形によりケラチノサイト、線維芽細胞、皮膚のその他の細胞からの大量のATPの放出が起こることを示している(図1)。
放出された ATPは皮膚と舌の知覚神経にあるP2X3イオンチャンネル受容体を活性化させ、知覚神経節(後根神経節)を介して脊髄、脳幹、視床下部へとメッセージを伝達する。
心血管、胃腸、呼吸器、泌尿生殖器の活性などの自律神経機能をコントロールする運動神経を含むこれらの脳部位は鍼治療の共通目標である。 
これらの知覚ニューロンメッセージは痛みの認識や、睡眠調節などのその他の中枢神経系の活性に関わる皮質の中心への経路を調節する(3)。
その後、鍼灸のいくつもの側面にプリン作動性シグナル伝達が関与するという多くの研究論文が出された。

この仮説を支持するエビデンス

プリン作動性シグナル伝達経路に関係する要素でとして、⑴機械的あるいは化学的刺激に反応したケラチノサイトや、おそらく高レベルのATPを含むメルケル細胞からのATPの放出;ATPはケラチノサイトから熱によっても放出されることが示されている。⑵ 免疫組織学的データは皮膚と舌の知覚神経線維のP2X3受容体を証明した。⑶ 単離した舌/舌神経のプレパラートで、De Frey フィラメントでの舌の機械的な活性化は舌の知覚神経線維を放電させ、これはATP活性化で真似することができ、P2X3受容体拮抗薬でブロックすることができる。そして ⑷ アデノシンA1とP2Y受容体を介したシナプス前阻害、中枢神経系のシナプスでのP2X4、A2A受容体を介した促進の両方が報告されている。これらのことが示されている。
それに続く論文が構築され鍼灸効果の基盤となるプリン作動性シグナル伝達を支持するエビデンスが増えた。
いくつかの研究は鍼のテクニックにより影響される皮膚細胞とプリン作動性シグナル伝達とを関連づけた。
例えばATPは熱に反応した時と同様に低浸透圧ショックによる機械的な刺激に反応してヒトケラチノサイトから放出されることが分かっている。
さらに鍼灸針の周りに蓄積されたマスト細胞も機械的な刺激に反応してATPを放出する。
その他の皮膚細胞である皮下の線維芽細胞もブラジキニンやヒスタミンに反応してATPを放出する。
ツツミらは機械的な刺激がより早期にコイズミらが報告したようにATPとP2Y2受容体の活性化によって起こるヒトケラチノサイト間のカルシウム波の伝播を惹起することを示した。
伝統的なマッサージである推拿、灸もプリン作動性シグナル伝達経路を介して作用する。
コネキシンヘミチャンネルを介したヒト上皮ケラチノサイトからのATPと、小胞ヌクレオチド輸送体などの顆粒について記述された論文が発表された。2010年の論文で鍼の最中のATP放出とブレイクダウンの後、アデノシンがA1受容体を介した神経伝達の接合部前阻害剤として作用し、抗痛覚受容作用を持つと主張した研究がある。異なる皮膚部位から脳幹やより高次の脳中心の構造への神経経路を記述した価値あるレビューが利用可能である。異なる鍼刺入部位は鍼によって調整されうる自律神経機能をコントロールする脳幹の特定の核に突き刺さる異なる神経経路を活性化するであろうからこれらの経路は重要である(Figure 2) 。

プリン作動性シグナル伝達と電気鍼

電気鍼は一対の鍼にわずかな電流を流す鍼灸の一形態である。これは伝統的な鍼を増強させると考えられており、痛みの治療に特に役立つと考えられている。
電気鍼の上脊髄の抗痛覚作用は中脳水道周囲灰白質領域でのP2X3受容体と関係がある。さらに慢性疼痛への電気鍼の鎮痛作用が はラットの後根神経節ニューロンのP2X3受容体によって仲介されることが示されている。
これらの研究の後、電気鍼は慢性疼痛および内臓過敏症ラットの後根神経節のP2X3とP2X2受容体の発現を抑制することが示された。He-Mu ポイント(ST36とCV12の組み合わせ)への電気鍼も内臓過敏症において大腸と脊髄でのP2X4の発現を抑制させる。さらにリンらのレビューによればATPの刺激を介した脳由来神経栄養因子(BDNF)発現の増加を介した鍼の神経保護作用が報告されている。

まとめ

鍼灸効果の基盤となる生理学的メカニズムを仲介するプリン作動性シグナル伝達仮説を支持するエビデンスが近年蓄積されてきている。この仮説のさらなるテストに役立つよう私は経験を積んだ鍼灸師が心拍や血圧の増減、非侵襲的なスキャニング技術を用いた脳内の特定のニューロンの特定といった数値化可能な作用を持つ経穴にフォーカスするよう提案する。もし鍼によって起こる作用が特定あるいは数値化可能であれば、研究者らはATPがその反応を真似できるか、あるいはP2X3受容体阻害剤がその効果をブロックするかどうかをテストできる。さらに我々は研究者らが自律神経機能に責任を持つ脳幹の運動神経からの記録と同様、動物モデルの皮膚や舌の知覚ニューロンからの反応を記録する実験を行い、鍼に関係する低域値線維と痛覚を仲介する高域値線維とを区別するよう提案する。

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