アレルギー性鼻炎に対する鍼

富士市の筋膜鍼 朝霧高原治療院の田中です。

いよいよ花粉症の季節到来ですね。アレグラとか飲んでもダメな方は鍼灸が効くかもしれません。私は鍼だけで毎年しのげています。

でも「花粉症だから鍼してほしい」なんて鍼に来る方はこれまたほぼいないんですよね。
ドイツなんかでは花粉症に対する鍼灸の効果が示された研究データもあり、鍼の本数が多かった群の方が効いたそうです。

今日は「脊柱管狭窄症と診断された人の大多数は症状が出るほどの狭窄がない」という報告を紹介しようと思ってましたが、せっかくだからドレスデン技術大学の先生たちが書いた花粉症と鍼灸のレビューを紹介します。

読んで鍼に興味を持った方はお電話で予約の上お越しください。

朝霧高原治療院
富士市石坂380-1 ゴルヴァティーク1F
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アレルギー性鼻炎に対する鍼灸
Bettina Hauswald, Yury M. Yarin 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4479426/

概要

鍼灸はおそらくさまざまなルーツを持つであろう数千年前からの治療法であり、東アジアの国々で伝統的に行われてきた。この50年でヨーロッパにも広がってきた。今日鍼灸は補完医療において大変重要な位置を占めている。さまざまな治療法の中でアレルギー性鼻炎の治療における鍼灸の作用メカニズムや効果に関する疑問が科学的に議論されている。このレビューは現在考えられている鍼灸の作用メカニズムと、アレルギー性鼻炎の治療における鍼灸の臨床研究の現在の状況についてまとめたものである。アレルギー性鼻炎の治療に鍼灸が有効であることを確かめるにはさらなる研究が必要である。

TCMと鍼のの歴史と原則

鍼は極東アジアの伝統療法でチャイナ、ジャパン、コリア、ベトナムで古代から行われている。考古学的な発見により、鍼は複数の起源を持つようであり、おそらく5000年前にはヨーロッパでも知られていたようだ。エッツタールアルプスの氷から見つかったミイラの皮膚を調べると今日使われている鍼のツボや経絡の付近に47のタトゥーのような点が見つかった。鍼に関する最古の記載は紀元前のチャイナのもので黄帝内経と呼ばれている。ヨーロッパではアジアの鍼灸の技術はポルトガル人とオランダ人によって16世紀と17世紀に紹介されて広まった。ヨーロッパで鍼灸について書かれた最初の書物は1683年のオランダ人医師のヴィルヘルム・テン・ライムのものである。アキュパンクチャーという造語もそこに由来がある。ヨーロッパではそれ以後の3世紀、鍼灸は風変わりな治療とみなされていた。しかし20世紀初頭にフランス人、オーストリア人、ドイツ人医師らが伝統漢法医学(本文にはTCMと書かれているが、これを TCMと書いてしまうと事実と異なる記述になってしまう。いわゆるTCMは第二次世界大戦後に中国共産党が考案した治療法)を再発見した。それ以降、伝統漢法医学と鍼灸は臨床的に利用されることが増え、鍼の作用メカニズムの仮説や理論に基づく研究が行われた。これらの科学的な議論の中で反射療法やフランスのポール・ノジェの耳鍼、ドイツのヨハン・グレディッチによるオーラル鍼、レーザー鍼などが生まれた。伝統漢法医学と鍼灸は道教の教えに基づいている。健康と病気、診断と治療は陰陽の二重支配あるいは相互作用としてみられる。五行論と気象作用、気の流れなどを反映して、人体のすべての生理的、病理的な過程が説明され、治療法が考案された。体内の気の流れは経穴と呼ばれる特別な皮膚の点を押すと調節される。ツボは互いに連絡しており、特定の運搬経路を介して一定の臓器につながっている。臓器へのつながりがツボの機能を決定する。伝統的な鍼灸では362のツボと14の経絡がある。

鍼灸の作用メカニズム

経絡の形態的基質は今日まだ見つかっていない。しかしこのようなツボはこれまでに研究され、解剖生理学的な特徴付けがなされてきた。解剖学的には、ツボの大多数(およそ80%)は皮膚に向かう血管や神経束が貫通する疎性結合組織が埋め込まれた皮下筋膜の小さな穴を表している。これらの点は受容体の密度が高く、筋膜トリガーポイントと71%の確率で一致する。生理学的な視点から見ると経穴では結合組織の高い電気伝導度とイオン交換容量が示されている。皮膚表面でこれらの点は10-100倍の表皮抵抗と高い電気容量を示す。電気鍼のこの知識の基盤は発展するに違いない。
臨床研究と動物モデルでの研究を通して異なる臓器や臓器系における鍼のさまざまな効果が描かれてきた。皮膚や筋の末梢循環は自律神経系調節のメカニズムにより改善されるだろう。さらにエンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィンなども放出される。
日常臨床において痛みの治療や筋骨格系の疾患に鍼灸が効くことは実証済みである。しかし他の疾患においても慢性期、あるいは急性期になんらかの影響を及ぼすに違いない。免疫系に与える影響についても幾度も示されてきた。ナチュラルキラー細胞、リンパ球増殖、走化性、貪食能の活性も調節するであろうとされている。血中好酸球や鼻汁の減少も観察されている。

アレルギーの病態への鍼灸とその効果

伝統漢法医学によれば身体の免疫は衛気の作用である。 衛気の循環を提供する主な経絡は手太陰、手陽明、足陽明、足太陰と身体の前面を通る経絡である。特にこれらの経絡は「伝統漢法医学的免疫療法」に取り上げられている。伝統漢法医学の視点ではアレルギーは「風病」であり「寒邪」あるいは「熱邪」とともに外部から侵入し、肺や皮膚や粘膜への衛気を妨げたものである。この衛気の「実」あるいは「虚」は腫れや鼻水、くしゃみ、アレルギー性湿疹、結膜炎といったアレルギーの典型的な症状を生じさせる。伝統漢法医学の診断アプローチと知識から結論を出すことは西洋医学的視点からは理解することが困難で、アレルギーの病態に関する我々の認識とはほとんど共通点がない。
古典的な免疫学とアレルギー学ではCD4+細胞が重要な役割を担っている。過去10年の研究はこれらの細胞のサブタイプの多様性を発見した。それでもなおアレルギー疾患の発生における最重要意義はTh1/Th2細胞の比率の変化である。Th1あるいはTh2細胞のCD4+サブタイプ優勢は免疫反応の発症を決定づける。ここでTh1細胞は細胞性免疫反応を生じさせるサイトカインであるインターロイキン2、IFN-γ、TNF-βを、Th2細胞は対照的にB細胞のプラズマ細胞への分化と免疫グロブリンE(IgE)産生を調節するIL-4、IL5、IL-10、IL-13を産生する。このプロセスにおいてアレルギーの主要なレギュレーターあるいはマーカーとしてのIL-10の役割の重要さが議論されている。
 鍼灸にはおそらくサイトカインの特性に影響を与える能力がある。気管支喘息とアレルギー性鼻炎に関するいくつかの研究が患者らと動物モデルの両方において徴候や症状の自発的改善を伴うサイトカイン特性への鍼の効果を述べている。鍼がすべてのサイトカインを変化させる訳ではないのは明らかである。鍼によって特に影響を受けるのはIL-10、IL-2、IFN-γである。これらのサイトカインの調節効果の他に、血中のIgE濃度の減少を報告している著者らもいる。サイトカインの変化と症状の改善との直接的な因果関係に関する研究は不足しているもののこれらの研究はこれが事実上サイトカイン産生の変化によるものだと示唆している。これらの効果のメカニズムはまだ不明であり、さらなる研究によって補われなくてはならない。

アレルギー性鼻炎に関する鍼灸研究

アレルギー性鼻炎は世界中に20-30%の頻度で存在し、ヨーロッパ全体では22.7%、ドイツでは20.6%と増加傾向にある。ヨーロッパではアレルギー性鼻炎にかかる一連の費用は直接コストで10〜15億ユーロであり、間接コストは少なくとも10億ユーロである。近年の臨床研究や薬学研究の分野の発展で、季節性、永年性のアレルギーに対する特異的な免疫療法(SIT)の新しく改善された薬剤が開発された。この間、これらの薬剤は皮下そして舌下の治療の療法で副作用や合併症が少なく、対症療法との組み合わせにおいて害がなく効果が高い。にもかかわらずこれらの成功と並行して、アレルギー性鼻炎への鍼灸の人気と鍼灸へのコンプライアンスは多くの患者らの中で非常に高い水準を保っており、64%の患者らが鍼灸を利用している。アレルギー性鼻炎の症状の軽減とQOLの改善に関する鍼灸の効果を検証したいくつかの研究がある。ここで鍼灸はQOLの改善を伴って鼻と結膜炎の徴候と症状の軽減に特に効果があることが報告された。古典的な鼻と目の症状だけでなくアトピー性皮膚炎に伴う掻痒症のような皮膚の症状も鍼で軽減するようである。2つの近年のメタアナリシスは現存する研究の結果をまとめることを目的としていた。Leeら(2009)の115のランダム化臨床研究のメタアナリシスで、要求された基準に合致したのは12の研究だけだった。そのうち7つが分析に選ばれた。アレルギー性鼻炎の予防の対症療法における鍼の効果に関するエビデンスは雑多である。季節性のアレルギー性鼻炎への結果は鍼灸の特異的な効果を示すことができなかった。永年性のアレルギー性鼻炎については鍼灸の効果を示唆した。世界中の同数の研究に関するRobertsらによる2つめのメタアナリシス(2008)では7つの研究だけが品質基準を満たした。この分析の結果はアレルギー治療における鍼灸の効果を明確に示すことはできなかった。著者らはこれらの研究で効果がないことが示されたことは偶然の結果ではないと述べている。著者らは現存する研究の方法論的な問題点を批判的に議論している。これらの研究の大多数は被験者がとても少ない研究、あるいは比較対照群がない、「偽の」鍼灸群がないなどの研究をメタアナリシスに含めていない。メタアナリシスに含まれた研究は研究数全体からするとともても少数である。このようにこれらのメタアナリシスの結果はアレルギー性鼻炎への鍼灸の研究状況をまっとうに反映していない。
アレルギー性鼻炎にたいする鍼灸研究の質の改善は急務である。最近始まった2つの多施設ランダムか比較試験はこのギャップを埋めるよう意図されている。422名の患者が参加したドイツでの多施設研究であるACUSAR(季節性アレルギー性鼻炎と鍼)研究はすでに結論が出た。この研究は抗ヒスタミン剤と偽鍼と対症療法について症状の軽減とQOLの改善に対する鍼の効果を試験した。研究の結果はVerum鍼の患者らにおいて統計的に有意なQOLの改善を示した。永年性のアレルギー性鼻炎に対する鍼灸の効果について比較すりようデザインされた238名が参加した研究が現在コリアとチャイナで行われている。ここですでに鼻炎の不快感とQOLの有意な改善が観察されている。最終的な評価が待たれるところである。

まとめ

現代のヨーロッパの医学知識のレベルにおいて伝統漢法医学の原則の直接的な統合は限られた範囲でのみ可能である。証明された鍼の治療効果の多くにはその科学的な正当性に疑問点が残っており、さらなる根本的な研究が必要である。アレルギー性鼻炎や喘息、アレルギー性湿疹などの他のアレルギー性疾患における鍼治療の有効性は、Th1/Th2細胞のサイトカイン特性の調節、特にIL-10、IL-2およびIFN-γの発現に起因するようである 。しかしこの仮説を確認するにはさらなる研究が必要である。鍼の効果はすでに複数の臨床研究で証明されている。決定的な証明のために現在、アレルギー性鼻炎の補完的治療としての鍼治療の役割の評価を目的とした大規模な多施設共同研究が行われている。

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