鍼の神経生理学的メカニズム

朝霧高原治療院の田中です。朝から朝霧でコーヒーを入れてもらい、少し遅めに治療院に来て午前中の鍼が終わったところです。昨日の晩から読んでいた論文を今しがた読み終えました。溜まった論文の抄録だけ訳してアップするつもりでいるのですが、これには抄録はなく、全文訳すことになりました。

所々聞いたこともないような単語が出てきたりするので、こういうのを調べようとするとキリがなく、まあそういうものなのだろうと思いながら訳しておりました。

今日は午後からの時間も比較的ひまで早く終わりそうなので明るいうちに帰れそうです。
さて、今回の論文は著者らのメンツを見ただけでこれは鍼灸師なら読んでおかなきゃダメでしょう、というような論文というか「特別寄稿」です。

今日はひまですが、富士の治療院が今より1.5倍忙しくなることを期待しています。ちなみに当院の鍼の効果が最も期待できる症状は慢性腰痛、坐骨神経痛、関節痛、頭痛、偏頭痛肩こりなどによる痛みや痺れ、五十肩、月経前のイライラや食欲コントロールの乱れ(PMS)、月経痛などです。

よろしくどうぞ。

Neurobiological Mechanisms of Acupuncture 2014
鍼の神経生理学的メカニズム2014
リジュン バオら 2014


西側諸国では補完代替医学の重要な手法として鍼の人気がますます高まってきている。

鍼は術後や化学療法の悪心や嘔吐の治療での有効性が示されてきた。痛みの管理や脳卒中のリハビリ、うつに対する有効な追加療法としても使われてきた。民間での受入が増えるにしたがって、鍼の神経生理学的なメカニズムに関する科学的な説明への探究に払われる注意も増えてきた。この鍼の神経生理学的メカニズムに関する特別寄稿は9つの記事を含み、そのほとんどは新奇な原始的な研究で、鍼の作用の現在の仮説に寄与する鍼の神経生理学的メカニズムに関するものである。

例えば、脳卒中は死亡率や身体障害のリスクが高い。鍼は脳卒中後の運動機能を改善させ、より生理的な状態へと運動系全体の神経ネットワーク構築に導く。Z. Xieらは鍼が小脳と第一次感覚運動野皮質との有効な二方向性の結合性を促進し、亜急性の脳卒中患者の動作協調や運動学習の改善に寄与することを示した。この研究は研究人口の範囲を拡大し、さまざまな脳に基づく不確定要素と鍼の後の臨床的な回復の度合との関係に焦点を当てた長期の観察に中継する脳卒中リハビリテーションを支持するさらなる鍼のメカニズムを示した。(正しく読めているか確信が持てない。原文はThis study demonstrated additional acupuncture mechanisms supporting stroke rehabilitation, which expand the scope of the study population and relay additional longitudinal observations focusing on the relationships between different brain-based variables and the degree of clinical recovery after acupuncture.)

不眠と顔面神経麻痺に対する鍼の神経学的メカニズムに焦点を当てた2つの論文がある。鍼は臨床的かつ実践的に不眠に広く利用されている。しかし鍼の治療効果の基盤となる神経学的メカニズムは不明である。急性の不眠、睡眠遮断などは急性不眠症の代替形式である。L. Gao医師らは正常な睡眠、完全な睡眠遮断後と異なる睡眠状態での三陰交(SP6)での鍼の活性化パターンについて研究した。三陰交への鍼は正常な睡眠の場合と比べて睡眠遮断の場合により広範な脳の活性化を引き起こすことが見出された。
内受容および自律神経情報を処理する顕性脳ネットワークは、睡眠不足の回復における鍼の基盤となるメカニズムを部分的に支持する可能性がある。

H. Tang医師らは1型単純ヘルペスウイルス(HSV-1)感染による末梢顔面神経麻痺の回復における電気鍼の効果について研究した。顔面神経機能は電気鍼群でより速やかに回復し、対照群と比較して3日目、7日目のHSV-1DNA量を有意に低下させた。電気鍼は症状を改善させ、罹患した神経を回復させ、HSV-1の減少を促進させた。著者らはHSV-1を減らす鍼の正確なメカニズムを浮き彫りにするためのさらなる研究が必要であることを示唆している。

マニュアル鍼は主にさまざまな刺激パラメータ(周波数、角度、深度など)を持つモノタイプあるいはマルチタイプの操作を含むものである。S. Hong医師らはさまざまな周波数によるマニュアル鍼が徐々に広がる急性の胃膨満を生じさせた正常ラットの脊髄後角の wide dynamic range (WDR)ニューロン興奮の発火率の明瞭な変化を生じさせることを見出した。

L. Yu 医師らはさらに異なる経穴への鍼に反応するwide dynamic range (WDR) ニューロンとsubnucleus reticularis dorsalis (SRD) ニューロンの役割について研究した。彼らは脊髄および延髄レベルでの内臓体性収斂を促進する機能が経穴の過敏化現象に関連している可能性を示唆した。

鍼の様式の刺激、あるいは経穴の位置など鍼のどの側面が異なる生理的な効果を生じさせるのかはまだ分かっていない。Y. Shan医師らは合谷(LI4) と太衝(LR3) の組み合わせであるSiguan穴の機能的特異性を評価することを目的に偽鍼対照を用いた。彼らは真の鍼が偽鍼に比べて体性感覚野皮質、辺縁-傍辺縁系、基底核の活性の増加を生じさせることを見出した。また複数経穴への鍼で生じる脳の活性化が個々の経穴刺激と緊密に関連しており、先に行われた多くの単一経穴刺激研究に対する重要な影響を有していることを見出した。

C. Wu医師らは太衝(LR3) への鍼で生じる脳のfMRIシグナルにおける低周波変動(low-frequency fluctuation)の強さと部位間の均一性の変化について研究した。彼らは偽鍼が心理的プロセスに一定の効果を持ち、機能に関連する脳領域には影響を及ぼさないのに対し、太衝(LR3)への鍼が視覚、動作、感覚、感情、鎮痛に関連した脳領域を特異的に活性化あるいは不活化させることを見出した。

これらの論文を集めることで我々は読者らが鍼の基盤となる神経生理学的メカニズムに敬意を払い、(研究の)サンプルサイズを増やしたり、基礎研究デザインの臨床的妥当性を構築したり、(例えば神経画像研究における)信頼性の高いバイオマーカーやヒトや動物への鍼への生理的な反応の臨床的な結果の測定方法の開発といった将来的な研究に対する重要な研究への疑問を考えることを期待している。

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