慢性腰痛に対する鍼:鍼研究学会(SAR)

朝霧高原治療院の田中です。寒いですね。今日は鍼の予約が午後からなので午前中は鍼の論文など読んで過ごしています。

このところずっと読んでいたアメリカ国立がん研究所のがん治療に伴う症状のマネジメントに対する鍼の論文をひと通り読み終わり、今度は3月に鍼研究学会(SAR:Society for Acupuncture Research )が出した慢性腰痛に対する鍼に関するまとめのような論文?というか提言をひと通り読みました。これです。https://www.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/acm.2019.29067.jjm?journalCode=acm短いので比較的すぐに読めました。

アメリカの公的保険、メディケア、メディケイドが高齢者の慢性腰痛に対する公的保険の適用を検討していることに伴う提言です。

まずは鍼の代表的な作用メカニズムについて書かれています。例えば動物実験では鍼刺激によって脳脊髄液中に内因性オピオイドが放出されること。ヒトでの脳画像研究で線維筋痛症患者さんの慢性の痛みに対して鍼が内因性オピオイドとその受容体との結合能を高めること。脳画像研究で手根管症候群(掌のしびれを生じさせるよくある絞扼性神経障害)の患者さんで過活動になっている体性感覚野皮質の過活性が鍼で抑制されること。同様に感情や内部のホメオスタシス、慢性痛のプロセスに重要な辺縁系領域を不活化させること。末梢結合組織で鍼刺激が線維芽細胞の形状や機能の変化を促し、結合組織の強度を回復させることなど主に慢性の痛みに関連する鍼の作用メカニズムが書かれていました。

次に鍼の臨床エビデンスについて。鍼はとても安全であること、主な副作用は微小出血や鍼による痛みであること、1万2千人近くが参加した臨床研究で鍼が標準治療や偽鍼に比べて痛みを有意に改善させたこと、一連の鍼治療が終わった後も痛みの状態が緩和された状態が持続すること、費用対効果がいいこと、などが述べられていました。

後は鍼灸師の教育システムについて。日本では国の指定を受けた大学や専門学校で3〜4年、規定のカリキュラムを終わらせた後、国家試験に合格すれば免許がもらえます。

それから今後の研究の課題について。標準治療で使う薬(例えばロキソニンなど)や理学療法、認知行動療法などとの効果の比較、痛みに加えて、多薬剤、血圧、転倒などを鍼研究の評価項目に付け加えること。非ステロイド系消炎鎮痛剤の継続的な服用は消化管出血や腎機能に対する悪影響なんかもありうるそうなのでその辺りの比較についても今後研究が進んでいくんじゃないでしょうか。

さて、そろそろいい時間なので治療院に向かいます。

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