多発性硬化症に対する鍼
こんばんは。朝霧高原治療院の田中です。
Google Scholar アラートから新しいお知らせが来ていたのでその中で鍼が中心になっている文献を2つ取り上げて読んでみましたので紹介します。
上のはアメリカのサンノゼの北の方で開業しているHuang Hall医師が書いた文献ですが、アメリカ内科学会では慢性腰痛の日薬物療法のひとつとして鍼を推奨しているのがわかりました。
下のは上海のグループからの報告で、多発性硬化症に鍼が効くんじゃないか、という報告です。
なかなか大変な病気だから患者さんもつらいんだろうし、本当に効くなら鍼してみたいけど、本当なんだろうか、と思いました。効くとしたらどのくらいよくなるんだろうか。患者さんにとっては自分ごとだからこういう論文を見るとまず「本当なのか?」というのが一番気になります。
多発性硬化症について書かれた国立精神・神経医療研究センターのウェブサイトです↓
https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r_men/tahatu.html
自己免疫疾患全般に対して鍼は効果が期待されているから試してみるのはいいかもしれないけれど、多発性硬化症の患者さんがうちにきたことはなく、この文献に書かれているような効果が期待できるかどうか興味のあるところだし、本当に効くならぜひ鍼したいとも思いました。
Energy Based Therapies for Chronic Pain.
Bonnie Huang Hall
https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-030-47117-0_13
さまざまな形のエネルギーは慢性疼痛緩和の目的で身体に応用される。鍼は近年広く支持されてきており今ではアメリカ内科学会(ACP)は慢性腰痛の非薬物療法のひとつとして推奨している。鍼は経穴に置かれた鍼に信頼を置く。鍼は機械的エネルギーである。熱や電流が鍼の部位に応用されることもある。鍼はだるさ、出血、痛みのリスクがある。一般にリスクは低く鍼は安全であると考えられている。低レベルレーザー治療(LLLT)は腰痛の非薬物療法としてアメリカ内科学会から推奨されるべきか議論されている。慢性疼痛に対するこのテクノロジーのエビデンスはまだ収集過程であり確かな結論に至っていない。レーザーテクノロジーは視力へのダメージリスクを有しているが、LEDバージョンのLLLTはそのリスクを持たない。
Tyrosine Kinase Receptors Axl and MerTK Mediate the Beneficial Effect of Electroacupuncture in a Cuprizone-Induced Demyelinating Model.
Zaofeng Zouら
https://www.hindawi.com/journals/ecam/2020/3205176/
電気鍼は、多発性硬化症(MS)の脱髄モデルで、分解されたミエリン破片のミクログリアクリアランスの強化を通じて髄鞘再形成を促進することが示されている。しかしこのプロセスに関与するメカニズムは明らかにはなっていない。TAM受容体チロシンキナーゼ(Tyro3、Axl、MerTK)は食作用とミエリンクリアランスなどのミクログリアの多様な特徴を調節する主要な役割を担うことが明らかとなっている。そのためこの研究の目的は電気鍼がこのモデルにおいて機能回復を改善させるかどうかを確かめ、このプロセスの間TAM受容体の関与を特徴付けすることである。ナイーブなコントロールマウスに加えてクプリゾンで生じさせたミエリン脱落モデルを確立させ長期にわたる電気鍼を行った。脱髄後の機能回復の効果を評価するため我々は脱髄の度合を客観化しするためビームウォーク検査とローターロッド(回転棒)行動テストを行ない、透過型電子顕微鏡と成熟オリゴデンドロサイトマーカーのタンパク定量化を行なった。ミエリン破片の堆積を評価するためオイルレッドO染色を行なった。またクプリゾンで処理したマウスで電気鍼が運動協調不全を有意に改善し、脳梁での少ないミエリン破片蓄積を伴って脱髄プロセスを相殺することを確認した。驚くことにTAM受容体のmRNA発現は電気鍼後に有意に増加しており我々はその後に電気鍼後のAxlとMerTKのタンパク発現を確認したが、これは電気鍼の間のそれらの改善を示唆している。最後に選択的TAMキナーゼ阻害剤であるLDC1267は運動協調不全に対する電気鍼の治療効果を消失させた。まとめると我々のデータは電気鍼がミエリン破片のクリアランスを促進するTAM受容体発現を高めることで脱髄プロセスを緩和することを示している。また我々の結果は電気はりが多発性硬化症患者の効果的な治療となる可能性を示唆している。
0コメント