慢性疼痛治療における鍼灸の役割
おはようございます。朝霧高原治療院の田中です。今日は朝からいい天気ですが相当暑くなるようですからお互い気をつけましょう。
さて。
Google Scholar アラートから新しい鍼灸の論文が送られてきたので例により抄録だけ読んでいきます。
ひとつめはこれ↓
The Role of Acupuncture in the treatment of chronic pain
慢性疼痛治療における鍼灸の役割、というタイトル。
先日イギリス医療技術評価機構(NICE)が慢性疼痛ガイドラインの草案を出したタイミングでこれです。やはり慢性の痛みに対する期待は大きいことが分かるし、実際鍼灸でよくなる人が多いです。
アリゾナ大学、ベスイスラエルディーコネス医療センター(ハーバード大学)、ルイジアナ州立大学、クレイトン大学医学部といった大学の麻酔科の先生たちの共著です。
原文はこちらをコピペすると読めます↓
https://doi.org/10.1016/j.bpa.2020.08.005
抄録
鍼灸は身体内部の不調を回復するのに鍼を使うTCM(中医学)に基づく臨床テクニックである。最近さまざまな痛みに対する鍼灸の利用に興味が高まっている。この根拠に基づく包括的レビューでは腰痛、片頭痛、線維筋痛症、肩こり、腹痛の5つの痛みに対する鍼灸の効果について評価が行われた。最新のエビデンスに基づくと片頭痛と線維筋痛症のふたつが鍼灸後に最も好ましい結果を得られる症状だった。同時に腹痛も鍼灸を使うのに最低限のエビデンスがあった。鍼灸は腰痛患者の痛みを和らげるのに効果的であり、肩こりの患者の痛みを和らげる短期的な効果がある。これらの症状に対する鍼灸の評価、特に腹痛に対してはは、現在の研究の多くが盲検化の欠如やサンプルサイズの小ささのためバイアスが高いので、さらなる研究が行われる必要がある。
以上こんな感じ。
研究に参加して鍼灸を受けるグループの人数が100人以下だと「鍼灸が効く」という結果になりやすいらしい。バイアスが低い、と判断されるにはそれが300人を超えないといけない。
また鍼灸は鍼を挿して鍼先がツボにしっかり当たると「ひびき」という鍼特有の感覚が生じるもので、それが鍼の効果にかなり影響を及ぼすことが知られている。ここで言う盲検化とは二重盲検のことで、鍼灸師も患者もその鍼が本当の鍼なのか偽の鍼なのかを分からないようにすることを意味している。ひびきが生じるのが本当の鍼だとすれば鍼灸師は意図せずにひびきを生じさせるなんてことはあり得ないし、ひびけばそれが本当の鍼だと患者には分かってしまう。著者の先生方は分かって書いているんだろうけど、鍼灸の盲検化は現実的ではないので鍼灸以外の盲検化が現実的でない、例えば大腸がんの手術とか変形性膝関節症での人工膝関節置換術とか、そういったものを評価するのと同じようなアプローチで効果を評価するべきだと思っている。
今日は大学で鍼の研究です。とても楽しみ。
0コメント